遺言執行者を家族にする場合の注意点
1 相続人が遺言執行者になることの可否
遺言執行者となることのできる資格については,未成年者や破産者は遺言執行者となることができません(民法1009条)。
遺言の内容には多彩なものがあり,遺言執行者は遺言者の意思を実現するという重要な職務を行わなければならず,このような重責を果たすことが困難な者については,欠格者として排除されています。
相続人が遺言執行者となることについては,一般には,相続人の廃除や認知など,相続人の利害と直接に衝突することになるために職務遂行の公平さが客観的に担保できないなど特段の事情がある場合を除き,相続人であっても遺言執行者となることができると解されていますが,一部には異論もあるところです。
ただ,利害関係人は,遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは,その解任を家庭裁判所に請求することができます(民法1019条1項)。
遺言執行者が相続人の一部と特別に緊密な関係にあり,対立相続人たちとは相反する立場に属し,不公正で相続人全員からの信頼が得られない場合,適任者ではないとして,解任の正当事由があるとされた事例もあります。
以上から,遺言執行者として指定された家族がこのような立場である場合には,他の相続人などの利害関係者から解任を請求され,これが裁判所に認められるおそれがあるので,注意が必要です。
2 遺言執行者の義務と責任
遺言執行者の義務は,遺贈の実現や遺産目録の作成など,上述のように多彩なものを含むものです。
そして,民法1016条1項本文では,遺言執行者は,遺言者が異なる意思を表示していない限り,やむを得ない事由がなければ,第三者にその任務を行わせることができないとされています。
これは,遺言執行者の法的地位が当事者間の高度の信頼関係や信認関係に基づいているものである以上,一身専属的なものととらえられているからです。
ただ,遺言執行者が自ら事務を処理するうえで,その履行を補助する者を使用することは妨げられませんし,専門的な能力が必要な事項を他人に依頼することは認められるでしょう。
この場合も,当該第三者が行った行為については遺言執行者が責任を負いますし,このような復任権の制限に違反した場合には,代行者を用いなければ生じなかったとみられる一切の損害について遺言執行者は責任を負わなければなりません。
したがって,家族を遺言執行者に指定する場合も,これを第三者に丸投げすることはできませんので,ある程度事務に慣れた方を選任する必要があるといえます。
3 遺言執行についてのご相談
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